いつか、眠るまで
『私が』楠木くんの横に座ってるんじゃなくて、『楠木くんが』私の横に座ってるだけ。
「花園っち、これで曲を入れるんだよ。」
楠木くんが四角い機械を手に取る。
あ、それ大事なものだったんだね。
「美亜〜、デュエットしよー!」
舞がマイク越しに言うものだから、キーンという音が部屋に響き渡る。
「いいよ、舞。歌おっか!」
私と舞がデュエットする曲といえば、一曲しかない。
お互いに好きなジャンルが違いすぎてあまり噛み合わないから。
けれど、一人例外がいる。
その人は、私と舞が歌い始めた直後に私からマイクを奪った。