イジワル専務の極上な愛し方
優雅なクラシック音楽が流れ、澄み渡った青空が窓いっぱいに広がっている。
久遠寺グループとの契約が決まってから、翌週の土曜日、私と翔太さんはフレンチレストランへ来ていた。
ここは、会社から車で十分ほどの場所にある外資系ホテル。その最上階のレストランにいる。
高級ホテルとして有名で、このお店も定期的にテレビや雑誌で紹介されているセレブ御用達のものだ。
白い壁が基調のスタイリッシュな店内で、明るく開放感に溢れていた。
今日のお昼、ここで私たちは、翔太さんのご両親と会っている。つまり──社長とその奥様。
「彩奈さん、そんなに緊張なさらなくていいのよ?」
翔太さんのお母さんは、とても温和で綺麗な方。和風美人で、着物が似合いそう。栗色の髪は品よく巻かれていて、艶もある。
初対面の私に笑みを見せてくれ、本当に優しそうな方だった。
「あ、ありがとうございます」
目の前に座っている彼のお母さんは、ニコニコ笑顔を向けてくれるけれど、私はとにかく緊張でいっぱいだった。
だって、今日は社長と奥様に結婚の許しをもらうために来ていただいているから。
個室だから、余計に緊張感が増す。それに、社長は相変わらず険しい表情をしているし……。
そんな私の背中を、隣に座っている翔太さんが優しく撫でてくれる。こういうときにでも見せてくれる彼の気遣いに、心が少しほぐれるようだった。
「親父、母さん。今日は、二人に許可をいただきたいことがあって、来てもらったんだ」
静かに口を開いた翔太さんに、社長は無表情で視線だけを向ける。そして奥様のほうは、笑みを浮かべたまま小さく頷いた。
「彼女と……、彩奈と結婚をしたいと思っている。それを許してほしい」
彼の言葉に、私も身が引き締まる思いがする。緊張は吹き飛び、二人に向かって頭を下げていた。
「いいだろう。久遠寺グループとの契約を成功させたのだし、これで業務の幅も広がりそうだ。浅沼社長の件を解決することが約束だったのだから、二人の結婚を許そう」
社長は淡々とした口調だったけれど、許してもらえてホッとする。でも、こんなにすんなりことが進んで、怖くもあるな……。
「私も、もちろん賛成よ」
目を細める奥様に、翔太さんはどこか安心したように表情を緩めた。
「親父、母さん、ありがとう。これからも、仕事を頑張るよ。もちろん、彩奈と一緒に」
当たり前に言ってくれた翔太さんの言葉が、心に温かく響いていく。背筋を伸ばした私は、社長と奥様を交互に見た。
「本当に、ありがとうございます。これからも、会社や翔太さんのために頑張りますので」
そう言った私に、二人は頷いてくれ、そして奥様が声をかけてくれた。
「彩奈さん、これからよろしくね」
「はい、こちらこそ、どうぞよろしくお願いします」