生真面目先生のちょっと大人の恋の話
「そう。」

私は感情を表に出さないように、何気なく返事した。

「確かあれは一ノ瀬先生が休む前の日よ。だって次の日の朝に野坂君とその事を話していたら、一ノ瀬先生の代わりに吉永先生が教室に入って来たんだもの。」

私が休めば、副担任の将人がホームルームをするのは当然だ。

「あっ、遅れるといけないからもう行くね、先生。」

酒井さんの後ろ姿をにこやかに見送る。

若いって素敵だな。

私はいつもこうやって生徒に元気をもらっているのかも。

だから教師という職業を辞められないのかもしれない。

廊下の窓から校庭を覗く。

そこには当然将人の姿があって…。

辛いはずなのに、その姿から目が離せない私が居る。

「いつの間にあんなに生徒達と仲良くなったんだろう。」

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