憧れのアナタと大嫌いなアイツ

甘い時間



「ちょっと待ってて」


もう一度耳元で囁くと
クルッと背中を向けた柊は

藤堂室長の所まで行くと何やら話し始めた

和の雰囲気の中に居るタイプの違うイケメン2人

絵になる風景に視線を奪われていると

笑顔でこちらに向かって歩いてくる柊と
その背後からこちらを見ている険しい顔の藤堂室長の顔が見える

ーーどうしたんだろーー

そう思うより先に

「さぁ、行くぞ」

サッと手を引いて離れから出る柊

「あ、ちょ、ちょっと待って」

慌てながらヒールを履いて小走りについて行くけれど

藤堂室長が気になって振り返る

それを阻止するように掴んだ右手をグッと引いて肩を抱いた柊

「キャッ」

強く引かれて躓きそうになる縺れた脚が
柊の腕に抱かれて体勢を立て直した

「危なっかしいな、花乃は」

間近で目を細めて笑う柊に心臓がトクンと跳ねる

「強引に引っ張るからでしょ!」

抗議するけれど益々笑われてこちらの頰も緩む


仕事で訪れたはずの長谷川流のお庭で抱き合っている状況を思いだして

「だ、ダメだって、離れて」

「ん?なんで?」

「だって」

抜け出そうと身を捩る度に腕の力を入れてくる柊

「だって?」

「だって・・・恥ずかしい」

そこまで言うと真っ赤になった頰を隠すように柊の胸にオデコを当てた

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