冬至りなば君遠からじ
 国道を駅の方に向かって歩いて、途中で旧唐津街道に入る。

 古い街並みが残る商店街で、黒塗板壁の和菓子屋さんやら、煉瓦造りの酒蔵なんかが並んでいる。

 観光客向けのお土産雑貨屋さんや、ガラス張りのおしゃれカフェには若い女性客が出入りしていて華やかだ。

 凛はその中の一つを指さした。

「あのパスタ屋さんにしようよ」

 古い商家の蔵を改装したイタリアンレストランだった。

「高そうじゃん」

「ランチセットで千円だってよ」

 凛が店頭のボードを指す。

 うーん、正直、高校生のお昼には高いと思う。

 女子にはふつうなのか?

「先輩はお金持ってるんですか?」

「ない。お金とは何だ?」

 さすが幽霊だ。

 だったらお店に入れないよ。

 他に行こうよ。

 コンビニのパンで良くないか?

「朋樹が先輩の分をおごりなよ。あたしは自分で払うから」

 いや、自分のだけでも高いのに、二千円なんて出せないよ。

 あるけど、使っちゃったら、終わりだよ。

 クリスマスとお年玉が出るまで息を止めていなくちゃならなくなる。

 先輩が店頭のボードを眺めている。

「この日替わりランチセットでいいぞ」

 いいぞって言われても、困るんですけど。

「いいってよ、朋樹。先輩とデートできるなんてうらやましいぞ、コイツ」

 何を言ってるんだよ。

 三人じゃないか。

 デートじゃないよ。

 凛がお店のドアを開けて先輩を先に中に入れてしまった。

 しかたがない、あきらめよう。

 店内は暗く、足下の小さな明かりだけだった。

 大人の来るお店だろ、これ。

 僕ら三人は店の奥の席に案内された。

 他には地元の年輩奥方達のグループと若い子供連れのママ友ランチ組がいた。

 テーブルには天井からの淡い光が円を投射していた。

 僕と凛が並んで座り、先輩が向かい側に一人で座った。

 水が運ばれてきて、凛が日替わりランチを三つ頼んだ。

 ウェイターさんが日替わりパスタのメニューを光の輪の中に広げた。

 凛はなすとほうれん草のパスタにオレンジジュース。

 先輩は凛のオススメでパルメザンチーズたっぷりのエリンギ入りボロネーゼとコーヒー。

 僕も同じ物にした。

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