冬至りなば君遠からじ
 ウェイターさんが去った後で凛が言った。

「先輩は今暗いところにいるけど、消えたりしませんね」

「夜になると消えるんだろう」

「そうなんですか。暗いからっていうわけじゃないんですね」

 僕は思いついたことを言ってみた。

「太陽のセンサーでもあるんですか」

「さあ、私にも分からない」

 他のテーブルのお客さんに聞かれたら気味悪がられそうな会話だった。

 なんとなく話が途切れたところで凛が話題を変えた。

「先輩は誰かと喧嘩をしたことってありますか?」

「喧嘩とは何だ? 喧嘩というものをしたことがないから分からない」

「人と仲が悪くなることですよ」

「仲が悪くなるとは何だ?」

「その人のことが嫌いになる……、同じか。なんて言ったらいいんだろうね」

 凛に話を振られても僕にも分からなかった。

 先輩がテーブルに両手のひじをついて手に顎を載せた。

「一緒にいるから喧嘩になるんだろう」

「そうですね」

「幽霊は独りだからな。喧嘩にならない」

 なるほど。

「でも、今、うちらと一緒じゃないですか」

「そうだな。じゃあ、喧嘩をするのか」

 僕も凛もちょっと笑ってしまった。

「しませんよ。うちら三人仲良いじゃないですか」

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