冬至りなば君遠からじ
博多の街
 美人は人目を引く。

 僕らは天神で電車を下りて、地上に出た。

 すれ違う人が先輩を見ていくのが分かる。

 視線が引きつけられて、相手の表情が一瞬変わり、すれ違う瞬間に目をそらす。

 注目される人というのは、こういう視線を浴びるんだなと初めて知った。

「ここにいるみんなに先輩の姿は見えるんですね」

「そのようだな」

 先輩は周囲の人には感心がなさそうだった。

 そのかわり、いろいろなものを指してあれはなんだ、これは何という物だと僕に聞く。

 外国人観光客でも、ここまで分かりやすい反応はしないだろう。

 僕も博多を歩くのは初めてみたいなものだ。

 親と来た時は親の行くところにただついていくだけで、何かに興味を持って見ていたことがない。

 階段状の建物の前にある公園から花で飾られた福博であい橋を渡って中洲に出た。

 那珂川沿いにキャナルシティへ向かう。

 途中、公会堂貴賓館で僕たちは写真を撮った。

 凛に送った方がいいかと思ったけどやめておいた。

 中洲の南端まで来た。

 古い石灯籠が立っている。

 先輩と二人で灯籠の台に座って川を眺めた。

 川幅の分だけ博多のビル街が切り取られて開放的な青空が広がっている。

 上空を飛行機が飛んでいく。

 着陸態勢に入っているのか結構低いところを飛んでいる。

「あれはなんだ」

「飛行機ですよ」

「おもしろい乗り物だな」

「あれは僕のお小遣いでは乗れませんね。高いです」

「高いところを飛んでいるからか」

 幽霊ジョーク?

「遠いところまで行くからですよ。北海道とか、沖縄とか、外国もですね」

「そうなのか」

「近くに福岡空港があるんで、見に行くだけならタダですよ」

「なるほど」

 何を納得したのかは分からないけど、先輩は空を見上げながら何度もうなずいていた。

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