春を待つ君に、優しい嘘を贈る。

「脱衣所にある白いカゴには洗濯済みのタオルが入っています。好きに使ってくださいね。櫛とドライヤーは鏡の左側です」


コクリと頷いた私を見て、紫さんは安堵の笑みを浮かべた。次いで、俯き加減の私の顔をしばし見つめた後、頭部をわしゃわしゃと撫でてきた。


「もう直ぐ焼き上がりますから、顔を洗って支度をしてきてください。少し遅刻をしてしまいますが、古織さんの自宅に寄りましょう」


身一つで家を出てしまったから、鞄を取りに行くのかな。

でも姉と会ったらどうしよう、と思案に暮れそうになった私を現実に引き戻すように、紫さんの温かい手にもう一度撫でられる。


「ウチにはいつまでも居てくださって構いません。ですが、あなたは女の子です。事情があるとはいえ、無断で外泊してしまったのですから、ご両親が心配されていらっしゃると思いますし」
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