春を待つ君に、優しい嘘を贈る。
この学校に来てから、二週間とちょっとが過ぎた。

声が出ないせいで苦労した授業もあるけれど、聡美という素敵な友達が出来て、とても充実していると思う。


「―――あ、神苑の人たちだ」


昼休みが終わるまであと十数分に差し掛かった頃。

教室に居る女子たちが黄色い声を上げ、廊下へと走って行く。


「アキラさーん!!シンさーん!!」

「きゃーっ!!」


どうやらこのフロアに神苑の人たちが来ているらしい。

極力関わりたくない私と聡美は、彼らのことなど気にも留めずに話を続けた。


「全く、神苑のどこがいいんだか」


「(あはは)」


暴走族・神苑は、この学校の生徒にとって神のようなものらしい。

夜な夜なバイクを走らせる集団に違いはないらしいが、周辺にある不良校――顔を合わせる度に喧嘩を吹っかけてくる生徒が集まる学校がいくつもある中で、彼らはその頂点に立つ者らしいのだ。

この学校が平和なのは、神苑のお陰。そう胸に刻め、とか何だか言っている人が多い。


「まあ、幹部の人たちや総長は、確かにイケメンだけどさ…」
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