クール彼氏とツンデレ彼女
「こんなところで何してるの?彼女待ち?」
顔を見ていないけど、なんとなくからかうように言っているような気がした。
「そうだよ」
楓真の怒ったような声に、私まで緊張してしまう。
「や、やだな、そんなに怒らないでよ。今回も告白されて大して好きじゃないのに付き合ってるんでしょ?」
グサッと、胸に刺さった。
いつまでたっても楓真が反論しなくて、私はそっとカーテンの隙間から二人の様子を伺う。
楓真に話しかけた人はめちゃくちゃ美人で、私なんて足元にも及ばないレベルだった。
すると、私が見ていることに気付いたのか、楓真は私を試着室から引っ張り出した。
そして店内だというのに、楓真は後ろから強く抱きしめて来た。
「残念ながら今回は違うんで」
楓真はそう言って顔を近づけて来たから、私は思わず左手で楓真の口を塞いだ。
止められたことで、楓真は不機嫌そうにする。
「いや、あの、ここではちょっと……」
ハグはともかく、キスはさすがに耐えられない。
私の言いたいことが伝わったのか、楓真は諦めてくれた。
これ以上楓真に何か言っても無駄だと判断したのか、彼女が私のほうを見てきた。