ヒロインの条件
——-
野中の家に行くようになったとき、最初は特に何も感じなかった。ちょうど両親の不仲が顕著になって、気持ちも腐っていたから、自分は何者でもないし、他人も何者でもないと思ってた。思春期特有の哲学的にこねくり回した感情もあったかな、と思う。
野中は重度のシスコンで、妹の話ばかりしてた。
「柔道の才能があるんだ」
「潔く相手を投げ飛ばす時、凛としてると思わないか?」
おかしい、と思った。妹にそこまで情熱を注いで、バカじゃないのか?と。シスコン野中に連れられて、柔道の試合を見に行った。みんな必死に汗かいて、本当バカじゃないかって思って見てた。
でも野中の言うと降り、確かに妹には凛とした美しさがあったと思う。誰よりも強く、潔く、まっすぐで、曲がった俺の心には、少々嫌味に映った。
まだでも、妹は野中の妹でしかなかった。