ヒロインの条件

ある日ジュースを取りにキッチンへ降りていくと、リビングに妹がいた。ソファにゴロゴロころがって、少女漫画を読んでた。ガキ臭いなあって思った。少女漫画なんて、夢ばっかりかいてる。男と女なんてもっと泥臭いし、永遠の愛なんてあるわけがない。うちの両親がいい見本だ。

妹は俺に気がついて、漫画を背中に隠して、俺から目を逸らした。妹が俺みたいな男を嫌いなのは、態度でわかっていた。それでもやっぱり面白くない。俺は冷蔵庫からジュースを取り出し、コップに注ぐと「飲む?」と聞いてみた。それはただの気まぐれにすぎなかった。

「いらないです」
妹はリビングから逃げたそうな顔をしている。俺の心に意地の悪い気持ちが膨れてきた。ガキ臭い、夢見たお嬢さんに、現実を教えてやりたい。漫画は漫画だって、突きつけてやりたい。

俺は子供っぽかった。今でも子供っぽいと思うけれど、その当時はひどかった。

「少女漫画みたいな恋がしたい?」
すると妹は「いいです」と首を振る。「ヒロインっていうタイプでもないから」

確かにヒロインってタイプじゃない。あの強さだ、どちらかというと窮地を救ってくれるヒーローの方がお似合いだ。

でも一度夢を見て、それから現実を知った方がショックが大きいだろうな。

性格が悪い。今思い出しても胸糞悪い。
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