3月生まれの恋人


『まぁ・・無理もないといえばないな・・』



その男は、あきれ半分驚き半分といった顔でそう呟くと

一つ、大きくため息をつきあたしを見た



『昨日、玄関先で君を拾ったの、俺

ずぶ濡れで倒れてて、触ったら熱あるからほっとけなかった』



蜂蜜色の髪が、困ったように揺れる



そういえば、昨日

和真の浮気(本気?)現場に遭遇してずぶ濡れで帰宅して・・・鍵・・。

ようやく一連の状況を思い出し、あたしの頭に浮かぶ新たな“?”



『あの・・あたし

どこで拾われて、ここはどこなんですか?』



悪い人ではなさそうな男に恐る恐る尋ねてみると



『拾ったのは君のうちの前。

ここは隣の俺の部屋』



『とっ・・隣っ??』



『そう、隣。』



“3ヶ月位前から住んでるんだけどな、一応。

もしかして知らなかった?”

彼はそう言うと、あたしに目をやり、小さく肩を落とした。



蜂蜜色の髪に、色素の薄い茶色の瞳

鼻筋は憎いほどにすっと通っていて、程よい厚みの唇

あたしなんかより全然、“綺麗”な男。

こんな美形が3ヶ月も前から隣に住んでいて気がつかないあたしって・・・

色々な事が一度にありすぎて、言葉もなくぽかんとしていると

さっきあたしの口を塞いだ大きな手が、すっと額へと伸びてきた



『具合は?まだ少し熱があるな』
< 6 / 33 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop