3月生まれの恋人
『まぁ・・無理もないといえばないな・・』
その男は、あきれ半分驚き半分といった顔でそう呟くと
一つ、大きくため息をつきあたしを見た
『昨日、玄関先で君を拾ったの、俺
ずぶ濡れで倒れてて、触ったら熱あるからほっとけなかった』
蜂蜜色の髪が、困ったように揺れる
そういえば、昨日
和真の浮気(本気?)現場に遭遇してずぶ濡れで帰宅して・・・鍵・・。
ようやく一連の状況を思い出し、あたしの頭に浮かぶ新たな“?”
『あの・・あたし
どこで拾われて、ここはどこなんですか?』
悪い人ではなさそうな男に恐る恐る尋ねてみると
『拾ったのは君のうちの前。
ここは隣の俺の部屋』
『とっ・・隣っ??』
『そう、隣。』
“3ヶ月位前から住んでるんだけどな、一応。
もしかして知らなかった?”
彼はそう言うと、あたしに目をやり、小さく肩を落とした。
蜂蜜色の髪に、色素の薄い茶色の瞳
鼻筋は憎いほどにすっと通っていて、程よい厚みの唇
あたしなんかより全然、“綺麗”な男。
こんな美形が3ヶ月も前から隣に住んでいて気がつかないあたしって・・・
色々な事が一度にありすぎて、言葉もなくぽかんとしていると
さっきあたしの口を塞いだ大きな手が、すっと額へと伸びてきた
『具合は?まだ少し熱があるな』