諦めたけど好きです
片思いは慌てる


「おい那奈!!」

廊下にバカでかい声が響いた。


「…なに?」

向こうから走ってきたのは光樹だった。


「あのさ!今日の放課後あいてる!?もしあいてたら買い物に付き合ってくんない!?」

「…あ、いいけど。もう少し音量を下げてほし…」

「やったぁ!ありがとな!んじゃまた後で!!」

人の話をきけ!! 言う前に、走っていってしまった。

なんの買い物かいってほしかった…


ー放課後ー


「…で、何を買うの?」

「おっと、忘れてた!………えっと…俺の妹に誕生日プレゼントでもしないとな~ってそんな感じ。でも女の子は何が良いかわからないから、お前に聞こうかな?的な。」

妹思いのお兄ちゃんだなー
「…わかったよ。つきあってあげる。」

「……お前はいいのか?買わなくて?」

「?何を?」

何を?買うの?なんか買わなきゃいけないものあったっけ?

「もうすぐだろ?秀の誕生日。」


「……………………いつだっけ?」

「えっと…4日後」


「…………………………………………………ギャーーー!!!!!」

「………せめて"キャ~"って言えや」


「マジか!!わっすれてた!どうしよう!?何をかえばいいんだろう!?」

「落ち着け!だから俺も男としてアドバイスあげるから!な!」


「あ、そっか」



ー3日後ー


私はやっと秀を見つけた。


「あ、あのさ!明日暇かな?なら…私と…出掛けない?」

明日は秀の誕生日

「明日?…………二人で?」

「うん!二人で!!」

「…まぁいいけど。何時にする?」

やったぁ!
「11時から!待ち合わせ場所は…フクロウのカフェで!」

フクロウのカフェというのは、前に秀と秀のお母さんと言ったお店である。
店の中に、フクロウのイラストがいっぱいあって可愛いのだ。


「わかったよ。……………なぁ」


「じゃぁまた明日ねー!」
私は家に向かって走った。

やったやった!!誘えた!
跳び跳ねたい!

でも私はこれからやることがいっぱいだ。

急いで家に帰った。

そして私の部屋に行き、クローゼットをあける。

「どの服にしよう…」

ガッツリ勝負服はひかれるかな……
スカートはダメ。

でも、少し女の子っぽい感じの………

「ど、どうしよかな…」


「…よし!これで決まり!次は…」

クローゼットのしたの引き出しをあける。
その中にはたくさんのメイク道具。

お母さんがメイク会社の副社長。
なのでかなりの試作品だの新商品だのをもらうが、やったためしがない。

「…どうやればいいんだろう」

アイシャドウ、コンシーラー、つけまつげ、カラコン、チーク………どれも目が回りそう。

『プルルルル』

「…………」
『プルルルルルル』

「………………………」

『プルルルル』

「うるさーーい!!!だれじゃーー!!!」

私は電話をとった。

「お前がうるせぇ!!俺だよ!光樹だよ!」

「お前か!なんだ!?」


「いや………実は…………」
なんだ?はっきりしないな……こっちは急いでるって言うのに………

「あ!!そうだ光樹!今から家来てよ!」

「はぁ!?なんで!?」

「頼みたいことあんの!早く来てよね!」

「いや説明になってn…」

『プチッ』

私は電話をきった。

ー20分後ー

「おっそい!」

「行きなり呼び出して文句言うなよ……なんで海里がいんの?」

すでに海里は私の部屋にいる。

「ま、いいから早く座って」
光樹をせかす。

私は光樹と海里と向き合うように座った。

「おねがいがあります!!」

「なに?」
「お前声でか」

「…メイクのやり方を教えてください!」

本当はユリナも呼んでたんだけど、用事かあるそうだ。

「…頼むべき相手を間違ってない?てかなんでメイクするの?」

海里にまだ明日、秀と出かけることを言っていない。

「………あ、秀君と出かけるのか!へぇー。…………服は?」

「これに決めたの!!」

私はさっきコーディネートした服を見せる。

「………………」
「……………………」


「どうかな?これなら、まぁまぁ女の子っぽい服だよね?」


「…いや~……………なんか……」

「いやダせぇな」

………………………え?


「え?ダサくないしょ。完璧でしょ」

「………………………」
海里は黙ってる。

「だってシマウマみたいになってるじゃん!なんで全身しま模様なの!?」


「え!だって縦じまの方が細く見えるって聞いて…」

「なんか違うんだよ!」

「これは女の子っぽいというよりは…………お笑いの…」


海里まで…。そんなにダメかな。

「…しょうがないね。俺が服を選んであげるよ。」

よいしょ。と言って海里は立ち上がった。

「クローゼット開けても大丈夫?」

「あ、うん。大丈夫」

確かに海里はセンス良さそうだし、男の子のこのみとしては意見とか大事だしな。

そして私は光樹の方を向いた。

「光樹にはメイクのやり方を教えてほしいの。」

「なんで俺?」

「器用だから」

「…はぁ。わかったよ」
光樹は誉められたら、断れない。

「まずは…これを塗れ」


渡されたのは、下地用のファンデーション?かな。

「わかったよ」
これなら自分でできる。

「あ、ちょっと待った。」

「何?」

「もしパフを使うなら、化粧水を染み込ませてから使うといいぞ。」

「ふーんそうなんだ。詳しいね」

「妹がいるからな」

「………つぎは?」

「コンシーラー」




そしてかなりの格闘が続いてやっと終盤になった。


「はい。最後はグロスな。」
グロスを渡される。

「…………………………」

「………早く塗れよ。」

「…………………………塗って」


「何でだよ!?そんなのも塗れないのかよ!?」

「だって何回もやってみたけど、こう、なんか色が片寄っちゃって、油もの食べたみたいになってるんだもん」

「はあぁぁぁ!?………………………………たくっ」

くいっと顎を捕まれ上を向かせられる。

「じっとしてろよ」





うわぁぁぁ。どうしよ。目のやり場がない。


やってほしいって言ったの自分だけどこれは…………………


「はいできたよ」

海里の声が聞こえた。

まずい。海里は今まで向こう側向いてたからこっちを見てない。

「………………………なにこの状況」

見られた。

「おし。できたぞ…」

「……!出来たね!これでオッケー!海里の方は…」

「うん。こんなもんでしょ」

海里が選んだ服は、白いポンチョに紺のガウチョで鞄を黄色の小さめの奴。全体的に上品の感じで固めてある。

「わあっ!すごい!これならいける!」

「でしょでしょ」

海里がニコッと笑う。

「よし!これでメイクのやり方も教わったし、服も決まったし!あとはプレゼントを渡すだけ……」

「頑張ってね」

海里が背中をおしてくれる。
「ありがとう!」

「頑張れよ………………」

光樹も小さい声で顔を反らして言ってくれた。



頑張るぞー!!!






ー次の日ー



「お待たせっ!」

「おう。」

私は秀と待ち合わせをしていたカフェの前で合流した。

「…じゃ行くぞ」

「…うん。」

あれ?なんか……………気のせいかな

秀はスタスタ歩いていく。

歩くのが早い。

「ちょっと待って!早い!」

「………………」



感じ悪い!なんで!?

「待ってってば!」

「………わかったよ」

そして二人であるきだした。

「……………おい。」
秀がこっちを見ないで言った。

「何?」

「………この前、光樹と買い物してたんだって?」

ドキッとした。あのときは、秀のプレゼントを買っていたから。見られてたかもと思った。

「…うん。そうだよ。なんで?」

「なに買ったんだ?」

「…別にたいしたものじゃないよ」

「だから、それがなにかを聞いてるんだよ」

なんで秀はこんなに聞いてくるんだろう。
こんな空気でプレゼントと言っても、祝える気分じゃない。
後でサプライズとしてわたしたい。

「別に何を勝手もいいでしょ!秀には関係ないから!」

「………そうかよ」

しまった。少し言い過ぎたかも。


また二人は無言で歩く。

「昨日も光樹とあってたんだろ?」

「え?」

なんで知ってるの?

「なにしたんだよ?」

「………………別に」

「そればっかじゃん。そんなに光樹といたいなら、買い物の付き添い俺じゃなくて、光樹と来れば良かっただろ。」



違う。私は秀と来たかったんだ。


光樹じゃダメ。



違うの。


なんか………秀が離れていく気がする。


「………何が言いたいの?」

「そのまんまだよ。俺じゃなくて光樹の方がいいんだろ?なら俺は必要ないだろって。」

「違う!私は………………私は………………」


あなたにプレゼントを渡したかったから……

その言葉は出なかった。

「………俺には関係ないよな。光樹と二人だけの秘密ってか?」

「なんでそんなこと言うの!?」

もう、秀が何を言いたいのかわからない!

なぜこんなに光樹にこだわるのだろう!

「…別に光樹なんか……………」

「それが本心じゃないだろ。」

秀が睨んでくる。こんなに怖い秀は見たことない。

思わず私は秀から目を反らしてしまった。

そして、それがいけなかった。

「………俺、用事思い出したから帰るわ」

「え!?」


「じゃあな」

「待ってよ!」

秀がどんどん遠ざかる。
追いかけたいけどもっと遠ざけられそうで、追いかけられなかった。

「…………なんで…………………」


あなたにプレゼントを渡したかっただけなのに……………


私は鞄かはプレゼントを出した。

腕時計だ。

カッコいい秀にぴったりだ!なんて思って買ったのだ。



「秀のバカ………………」

なんでこんなに私の恋は上手くいかないのだろう。


「バカ!………」

涙が落ちる。

今すぐに秀のところにいって謝りたかったけど、
私の足は動かなかった。
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