突然ですが、オオカミ御曹司と政略結婚いたします
「私が男を知らないってからかってきたのは誰よ。なのにそれを疑うなんて……。そんな情けない声出してる場合じゃないでしょ。今から、なにがあるかわかってるの?」

 彼はなにも言わない。表情が窺えなくて不安になるが、私は言葉を続けた。

「私はなんとも思ってない人に抱き締めさせるほど、軽い女じゃないんだけど」

 驚いた様子の彼と視線が絡む。

「ここまで言わせておいて、まだ疑うの?」

 いたたまれなくて、眉根を寄せて睨み上げた。彼はきゅっと目を細め、口角を緩やかに上げる。

「お前のことになると、俺は余裕がないんだ」

 ささやいた彼は、再び倒れ込んできた。全身が燃え上がるように火照る。

 今のって……。

 のしかかる重さに我に返って暴れるが、彼は退けてはくれない。
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