突然ですが、オオカミ御曹司と政略結婚いたします
「最初は意地悪ばっかりで、そんな素振りなんて全然見せなかったじゃない。なんだったら、犬だ、ガキだって……」

「――お前が」

 彼は言いかけて、我に返り口を結んだ。

「なによ」

 気になって問い詰める。彼は悔しげに奥歯を噛んでから、覚悟を決めたように口を開いた。

「……お前が、俺のことを忘れてたからだろ」

 忘れてた?

「私たち、結納の日が初対面じゃないの?」

 またしても頭の中が取っ散らかる。

「会ってるんだよ。俺とお前の姉が顔合わせをしていた場に、お前もいた。そもそも、どっちと婚約させるかを決めるのに、片方だけを連れてくるわけないだろ」

 彼は呆れたようにつぶやいた。

 そう言われるとそうだ。しかし、幼かったとはいえ、私にはそのときのことがまったく記憶にない。
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