突然ですが、オオカミ御曹司と政略結婚いたします
「最低限必要なものだけでいい。家具やだいたいのものは用意した。足りないものは、またあとで取りに来るか揃えればいい」

「次の機会にしません?」

 苦い笑みを浮かべ、ささやかな希望を込めて彼を見上げる。

「俺がまとめてやってもいいけど?」

「……っ! ここで大人しく待っててください!」

 跳ねるように立ち上がった。彼は、クックっ……と肩を小刻みに揺らしている。無駄だとわかってはいたが、悔しくて口をへの字に結んだ。大袈裟に顔を背け、彼を置いて廊下へ出る。

「日菜子様」

 突然かけられた声に、驚いて「わっ」と短い声を上げた。

「……き、清仁」

 背後にいたのは、清仁だった。

「驚かせてしまい申し訳ございません。お部屋の前にスーツケースを出しておきましたので、お使いください」

 清仁が会話を盗み聞きするなんてありえない。ということは、祖父に聞いて知っていたに違いない。どおりで帰ってから、祖父たちの姿が見えないわけだ。私だけが聞かされてなかっただけで、計画的な犯行だったのね。

 唇を尖らせながら、清仁を見つめる。
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