突然ですが、オオカミ御曹司と政略結婚いたします
「本当に、わかりやすいやつだな」

「なによ」

 唇を尖らせると、彼が嘲笑する。

「いいから食え」

 そう言って彼も「いただきます」と手を合わせ、食べ始めた。私は食事を進めながら、ちらりと横目に彼を見つめる。

 ソファーに姿勢が良く座り、ひと口ずつゆっくりと口に運んでいる。所作のひとつひとつが美しく、紙皿とプラスチックの食器で食事をしている姿にさえも彼の育ちの良さが感じられた。

「姉は見つかったのか?」

 突然彼が、手もとに視線を落としたままつぶやいた。つい観察していた私は、小さく跳ね上がる。持っていたお皿を落としそうになったが、なんとか留めることができた。

 速くなった鼓動を落ち着かせながら、まつ毛を伏せる。

「……まだ」

 消えたあの日から皆で何度も連絡しているが、姉は一向に電話に出る気配はない。手紙に、『行く当てがあるから心配しないで』と書かれていたこともあり警察には届けていないけど、祖父が知り合いの探偵事務所に捜索を依頼していると言っていた。

 お姉ちゃん、しっかりしているから無事でいるとは思うけど……心配だ。せめて、電話にくらい出てくれればいいのに。
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