突然ですが、オオカミ御曹司と政略結婚いたします
「どうせじたばたするだろ。このまま運んでやる」

「えっ? 歩けるってば!」

「はいはい」

 私の訴えは虚しく、彼はそのまま片手で寝室のドアを開けると、軽々と私を運んだ。電気が点けられ部屋の様子が明らかになる。中には、大人が四人ほどで寝てもゆとりがありそうな大きなベッドがひとつ。あとは、そばにウォールナット材の丸いサイドテーブルと、左の窓側に観葉植物があった。淡いオレンジの照明が、部屋全体を温かく照らしている。

 危うくうっとりしかけたが、またしても大問題だ。

「どうしてベッドまでひとつなのよ」

 寝室まで同じなんだから、ベッドくらい別々だって誰も怪しまないと思う。徹底するにも程があるというか、ここまで来たらただの私への嫌がらせな気がする……。

 もう怒るにも疲れ、嘆きのため息をついた。ふっと小さな笑みを零した彼が、ダークブラウンの掛布団の上にようやく私を下ろす。

「……ちょっと、おでこ貸して」

「はっ?」

「いいから!」

 わけがわからないといった面持ちの彼を、強引に呼び寄せる。悩むような仕草を見せた彼だったけれど、結局膝に手をついて額をこちらに差し出した。その丸く綺麗な額のど真ん中目がけ、渾身の力を込めて中指を弾く。
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