突然ですが、オオカミ御曹司と政略結婚いたします
「問題ない。新郎は、両家のためなら相手は日菜子でも良いと言っておる」

 平然と告げられた言葉に、心底呆気にとられた。

「……そ、その人、正気なの? 悪いのはうちだけど、仮にも結納当日に相手が逃亡したっていうのに、代わりでいいから予定通り進めようなんて……」

 なんとか喉の奥から絞り出した声は、自分でも驚くほどに上ずっている。

 信じられない。

「今回の結納の儀が、互いの家の問題だけではないとお前もわかっているだろう?」

 穏やかながら、どこか奮い立つようなしっかりとした声色で言い放たれる。喉が詰まる心地がした。

 そう。この結婚には、ホテル・ハルオの未来もかかっている。これはいくら同志というほど信頼し合っていると言えど、単なる祖父たちの希望を叶えるためだけの結婚ではない。

 タチバナグループとホテル・ハルオの業務提携の契約を交わす上で、互いにより強固な関係を築くために孫同士の結婚が決められたのだ。

 いずれは資本提携も行い、経営統合を前提としていると。娘に生まれた私と姉に、将来負担を背負わせたくないと祖父と、現在社長を務めている父が決断してくれたと聞いた。

 だからって……。〝相手〟は、お姉ちゃんじゃなくてもいいんだ。それって――。
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