突然ですが、オオカミ御曹司と政略結婚いたします
「なんで創がそんなに怒ってるのよ」
家につき、部屋のドアを締めた瞬間、ついに耐え切れず口を開いた。ひと息ついてからネクタイを緩める彼の顔が、みるみるうちに忌々しげになる。
「別に、怒ってない」
「怒ってるじゃない。せっかく」
「しつこい」
さらに険しく顔を歪めた彼が、ひと際低い声で言い放った。話し合いにもならないその態度に、段々と腹が立ってくる。
同じ部屋で過ごすんだから、こういう問題は早めに解決した方がいいと思って聞いたのに。そっちがその気なら、勝手に気まずくでもなんでもなればいいわ!
両手をぎゅっと握り締め、彼に鋭い眼差しを向けた。
「創が認めないからでしょ! だいたい、長電話してたわけでもないのに勝手に――」
「うるさいんだよ、このバカ犬が」
語調を強めた彼に腕を引かれる。バランスを崩し、目の前の胸もとに飛び込むような形で倒れこみそうになった。切れ長の目が私を捉え、一気にすぐそばまで迫る。その存在に気がついたときには、私の頬は彼の手によって包まれていた。すると、次の瞬間――。
唇に強引な温かさを感じた。
――な、なに? なにが起きたの……?
頭の中が真っ白になり、一瞬心臓が止まった心地になる。なんとか脳みそを回転させ、それが彼によってもたらされたものだと理解したが、だからこそ余計に考えが混沌させられた。それなのに鼓動は、初めて感じる熱によって息苦しいほどに速くなっていく。