突然ですが、オオカミ御曹司と政略結婚いたします
「おはよう……」

 私がそう言うと、彼は一瞬固まったままこちらを見上げてから、自身の腕で顔を隠した。

「お前……いつも朝までぐーすか寝てるくせに、休みのときに早起きってガキかよ……」

 ひとりごとのようにつぶやかれる。その態度を見て、確信した。やはり彼は、私が寝静まったあといつもここで眠っていたのだ。

「風邪引くかもしれないのに、どうしてここに?」

 問い掛けるが、彼は答えない。唯一見える唇は、固く結ばれていた。

「創?」

 さらに声を掛ける。無言を貫く彼の正面へ回り込もうとしたそのときだった。突然腕を引かれ、私の身体は軽々とソファーの背もたれを越える。驚いて短い声を上げながら、そのまま勢い良く倒れこんだ。
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