夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】

……
…………。


ーーでも、彼の唇は私に触れなくて。


「……ぷっ、あはははッ!」

代わりに私の耳に届く、笑い声。


「!っ……」

その笑い声にパッ目を開けると。
私の瞳に映るのは、お腹を押さえて笑うバロン。

私をからかって笑う、いつものバロンの笑顔が目の前にあった。


「アカリ、真っ赤っ!
あ~茹でダコ食べたくなってきた~」

「ゆ、茹でダコって!
も~!バロンひどいっ!」

意地悪な彼の対応に、一瞬カッとなって頰を膨らまして拗ねる。

私のドキドキを返せ〜!って、思った。


それでも。
バロンの笑顔を見ていたら、私は心の底から良かったって安堵した。
いつもみたいな彼とのやり取りに、やっと胸を撫で下して笑顔になれた。


「……。
ありがとね、アカリ」

そんな私を見てそう言ったバロンが、こちらに向かってスッと手を差し出てくれる。
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