夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】

ようやくまた、一緒に微笑う事が出来た。
今この屋根の上という空間は、誰も邪魔者がいない私とバロンだけの場所。

嬉しいような恥ずかしいような気持ちでドキドキしていると、心地良い夕方の風が甘い香りを運んできて、私にある存在を思い出させる。


「!……あ、そうだ。
私ね、バロンの為に……。……あッ!」

甘い香りを漂わせる物ーー。
腕にかけていたバスケットを見て、私はサーッと青ざめた。


さっき、落ちそうになった時。
バロンに引き寄せられて倒れた時。

散々バスケットに衝撃を与えたり、揺らしてしまった。
果たして、その結果は……?


「ちょ、ちょっと待ってね!」

……っ。
ダメだぁ……割れちゃってる。
こんなの、渡せない。

バロンに見えないようにこっそりとバスケットの上を少し開けて中を確認した私は、その無残な状態に絶望して肩を落とした。
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