俺様社長はカタブツ秘書を手懐けたい
「ううん。きっと天国でお父様も頷いてますよ」


こちらこそ勝手な憶測だけれど、雪成さんのご両親は、彼の頑張りを見守ってくれていると信じたい。

ちゃんとした恋人同士になってから、彼は決して私を悲しませることはしないし、目一杯の愛を与えてくれている。

もちろん仕事に関しても、手は抜かないし大胆不敵なやり方なのは相変わらずだが、社員やお客様への思いやりがさらに増していると感じる。

お父様のレシピは、一皮むけた雪成さんへのご褒美のような気がしてならないのだ。

私の言葉を素直に受け止めた様子の彼は、柔らかでちょっぴり含みのある笑みをこぼす。


「まぁ、麗専属のシェフとしてなら一人前かな」


茶化したつもりでも、私はとても嬉しくなる。この人が私だけのシェフでいてくれるなんて、贅沢で幸せすぎるもの。

口元をほころばせるも、やっぱり女として自分も頑張らなければと思う。


「そのノート、私も見させてもらってもいいですか? 覚えたいです、不破家の家庭の味」


でしゃばりすぎだろうかと思いつつもお願いしてみると、雪成さんはふわりと微笑む。


「もちろん。そうしてもらえたら俺も嬉しい」


快くノートを渡してくれる彼にお礼を言い、私はそれを大事に受け取って、じっくりと目を通した。

いつかこのレシピを、雪成さんとの家庭の味にしていけたら……なんて、大層なことを考えながら。

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