俺様社長はカタブツ秘書を手懐けたい
恋人になれたとはいえ、そこから先に進むのはまた難しい。

私から切り出してもいいのだけど、やっぱりこれは男性側からアプローチしてほしい願望もあるし……。桃花が結婚すると聞いたら、急に悩み始めてしまった。

悶々とする私を、気配を消していた武蔵さんが静かに眺めている。その横に立つ桐原さんは、私を安心させるようにふっと口角を上げる。


「もしどうにも困ったときは、また私が社会的に抹殺される覚悟でお助けしますから、遠慮なくおっしゃってください」

「頼みづらいです、それ」


微妙な笑みでツッコむ私。桐原さんはやはり私に気があるわけではなく、楽しみながら雪成さんとのサポートをしてくれているらしい。

ミーティングルームに残っているのは事情を知っている四人だけなのをいいことに、好き勝手に話していると、ガチャリとドアが開く。


「アリサ」


噂をすれば、顔を覗かせたのは雪成さんだ。社内では前と変わらない呼び方なのは、仕事とプライベートのメリハリがつくから。

電話がかかってきて打ち合わせを抜けていた彼の登場に、私は条件反射できりっと姿勢を正し、「はい」と返事をする。
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