俺様社長はカタブツ秘書を手懐けたい
ごめんね、雪成さん。忙しい中こんなサプライズまで計画してくれていたのに、あなたに結婚の意思があるかどうかと疑って。

薬指にきらめく彼のものだという証を右手で包み、嬉し泣きしながら想いを伝える。


「私も無理です。雪成さん以外、考えられない」


震える声でそう言った瞬間、背中に手が伸びてきてしっかりと抱き寄せられた。


「ありがとう。それと、誕生日おめでとう」


耳元で響く滑らかな声も、抱きしめる腕の強さや温かさも、なにもかもが愛しくて堪らない。こんなに素敵な誕生日を迎えられるとは思ってもみなかった。


「幸せすぎて死にそうです……」


涙が落ち着いてきて腕の中でぽつりと呟くと、雪成さんは私を囲ったまま見下ろし、突拍子もないことを言う。


「死にそう? 生憎、今サンドイッチはないぞ」

「サ、サンドイッチ?」


このロマンチックな状況で、なにをどうしたら突然サンドイッチが出てくるのか。まったく意味がわからない。

ぐすっと鼻をすすって間抜けな顔を上げれば、彼は含みのある笑みを浮かべている。


「あのとき麗がプロバイドフーズを辞めてたら、今こうしてることもなかったんだろうな」
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