俺様社長はカタブツ秘書を手懐けたい

「来週はもうクリスマスだね。今度の土日は絶対休むから、一緒にどこか──」

「麗」


突然話を遮られ、私はフォークにパスタをくるくると巻きつけるのをやめてキョトンとする。

颯太はさっきまでの穏やかな雰囲気はどこかに潜め、深刻そうな表情で私を見つめていた。

そのとき、瞬時に悟った。これは、悪い展開が待っているに違いないと。


「その約束は、できない」


……あぁ、やっぱり。次に来る言葉は、きっと……。


「別れよう」


予想通りのひとことが重々しく放たれ、全身の力が抜けていく感覚がした。

カチャリ、とフォークを置く冷たい音が響く。ショックなのは確かなのに、どこか冷静な自分もいて、なんだか変な感じ。


「……私が、仕事を優先するから？」


落ち着いた声で呟くと、颯太は「そうじゃない」と首を横に振った。


「仕事優先なのは社会人として当然だろ。僕たちが会える時間が減るのも仕方ないし、頑張ってる麗を応援したいとも思う。問題なのは……僕が、麗と会えないことを寂しいと思わなくなったこと」


彼は沈痛な面持ちをしつつも、正直に気持ちを伝える。私はそれを、しっかりと受け止める。