私の好きな警察官(ひと)!
***



あれから、どれくらいの時間が経っただろう。
エレベーター内の電気が付いて、ゆっくりと動き出したエレベーターに蓮見さんは我に返ったように私を解放した。


あまりに急な出来事で、蓮見さんの支えなしでは立っていられなくなった私がへなへなとその場に崩れ落ちるのを見て、蓮見さんは慌てて手を差し出してくれたけれど、


その手を取る気力すら私には残っていなかった。



私だけ乱れた呼吸。
私だけガクガクと笑う膝。
私だけ腰が抜けてるこの状況。


笑っちゃう。
悔しいくらい経験値が違うんだって嫌でも分かる。


別に怒ってるとか軽蔑してるとかそう言うんじゃないのに、蓮見さんの顔が見れない。だって、電気付いてるし、絶対真っ赤だし。さっきのキスを思い出すとどうしようもなく体が疼く。



むしろどんな気持ちでしてくれたのかなんて分からないけれど、気まぐれとは言え、蓮見さんとのキスは


ギュッと胸が苦しくなるくらい嬉しかった。



お互い無言のままエレベーターは5から4のボタンが点灯して、


───チン


アナログな音だけ響かせて止まった。



静かに開くドアの向こうにメンテナンス会社の方と思われる男性2人が立っていて、




「大変ご迷惑をお掛けしました。目的の階とは関係なく最寄りの階にてエレベーターを止めさせて頂きました!おケガはないですか?足元お気をつけてお進み下さい」



床にへなへな座り込んだままの私に、1人の男性が手を差し伸べてくれるから、反射的にその手を掴もうとした私は、


「わ、ちょ……」


突然フワッと体が宙に浮いて、自分が蓮見さんの腕に抱き抱えられているんだと気づいた瞬間、恥ずかしさで全身の血が逆流しそうな感覚に襲われた。
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