憧れの彼と、イイ仲になりたいんです!
(それに比べてこっちは…)


私が飲めないからのか、皆は遠慮して話しかけてくる人もいない。おかげで私は早々にお腹がいっぱいになってしまい、もう帰ってもいいかな…と思い始めた。


(こっそり抜け出してしまおうかな。同じグループの子に『帰るね』と後でラインしておけばいいや)


そう思って立ち上がった。
帰る前にトイレだけは行こうかと思い、ビアガーデンの中を歩き出す。


淡い闇の広がる中に煌めく提灯の波。

露店の店先からは香ばしい墨の匂いやソースの匂いが漂い、それらを嗅ぎながらホテルの中に入り、服からニオイを払い落とすように掌で叩いた。


きっとまだ坂巻さんは中で飲んでる筈だ。
先輩達にお酌されながらお礼を言って、楽しく笑っている筈__。



「いいなぁ。皆は坂巻さんと話が出来て…」


呟きながら足を踏み出した。
その途端にぎゅっと二の腕を引っ張られてビクついた。

背中を伸ばして振り返ると彼がいた。
私は驚きで目が丸くなったまま固まり、相手はそんな私の顔を見て微笑んだ。


「もう帰るの?諸住さん」


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