憧れの彼と、イイ仲になりたいんです!
優しく話しかけてくる顔に目が奪われる。


どうして、何故、彼が此処に……?


「帰るなら一緒に出よう。俺ももう退散しようかと思ってたところなんだ」


ブルーのワイシャツの人はそう言って歩き出そうとする。
私はその声を聞きながらもまだ現実とは思えなくて、ぼうっとしたまま相手の顔を眺めていた。


「どうしたの?歩かないの?」


視線が流されてきて、ドキッと胸が踊る。
二の腕を掴んだまま離さない彼から一歩離れ、「あ、あの…」と声を発した。



「ひ、一人で帰りますから」


何とか言えた言葉がそれだった。
彼はポカンとした顔つきで私を見下ろし、フ…と寂しそうな笑みを見せた。


「そう言わずに一緒に行こうよ。俺も君と話がしてみたいんだ」


ニヤッと笑いながら囁く表情を見てハッとした。
もしかして、さっきの独り言を聞かれた…?



(うそ…まさか…)


怖気付いて彼を見返した。

坂巻さんは「行こう」と歩き出し、私はその彼に引っ張られるような格好で後を追うことになった。

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