憧れの彼と、イイ仲になりたいんです!
彼女はまだぼうっとして、目が潤んだままだ。
俺を見つめながら現実なのかと疑ってるみたいで、その熱っぽさすらも魅力だと感じた。



「……わ、私…」


我に戻ってきたらしい彼女が唇を開く。
その隙間から漏れ出す声に集中しながら、俺はじっと彼女のことを見つめ返した。


「…私も坂巻さんの素顔が知りたいです。いつも皆に笑いかけてる顔だけじゃなくて、怒ったとことか、不機嫌そうな声ももっと聞いてみたい」


でも、やっぱりそればかりじゃ嫌だな…と呟く声がして、ぎゅっと彼女の頭を抱いた。

ひゃっ!と驚く彼女の髪にキスを落としながら、「素顔の俺を好きになって」と囁いた。


「これからは、君にだけ俺の本音を見せるよ。
そしたらきっと呆れてしまう部分もあるかと思うけど、お互いにそれを繰り返しながら、仲を深めて行こう」


いいよね?と問うと腕の中で頷く。

はにかむ様に顔を上げて笑う彼女を解き放つのが惜しくて、汗ばむ陽気の中、もう少しだけこのままでいて…と願った。


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