憧れの彼と、イイ仲になりたいんです!
背後から呼び止められて振り向くと小山さんはニコニコと笑っていて、私はハテナ?と首を傾げた。


「君が作った資料ね、今日も見易いと評判だったよ」


戦略会議で使われた資料のことみたいだ。
私は直ぐに自分ではないと言おうとしたのだけど、課長は全てお見通しの様子で。


「いつも他の女子に仕事を回されてるだろ。君が作ったものは直ぐに分かるよ。だって、フォントが他の連中とは違って大きめだからね」


それが上部の人達には好評なのだそうだ。

皆、老眼が入ってるからと笑う課長の言葉にポカンとして、それをどんな風に受け止めればいいのか…と迷った。


「これからもその調子で頼むよ。あ、文字だけじゃなくて表もグラフも見易いよ」


褒めるとさっさと二課へ入る。
私はその背中を見送り、キョトンとしたまま今言われた言葉の数々を思い起こしていた。



(……ひょっとして今、褒められた?)


ぼうっとしたまま歩きだし、でも、あれは自分一人で作った資料でもないのに…と焦った。

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