憧れの彼と、イイ仲になりたいんです！

「これは俺が口を挟む事じゃないと思うよ。だけど、今日だけは残業を引き受けないで帰って欲しい」


そう言うと真剣な顔つきに変わる。
それを見て、私はハッと思いついた。


（まさか、あの約束を果たそうとしている？）


何の為に？
あれは彼の気紛れなのに？


ぐっとものが言い出せずに息を吸い込む。
私に向けられてる視線が熱望している様な雰囲気で、先輩に対して「大丈夫です」とは言えなかった。


「あーもういいわよ、分かった！」


先輩は諦めたような感じで声を上げ、「自分でやって帰ります！」と宣言した。


「諸住さんごめんね。この間のことも悪かったわ」


不貞腐れるように謝り、私はそれにどんな言葉を返せばいいのか分らず迷った。


「いえ、あの…」


ちらっと窺うように彼に視線を向けると、坂巻さんは一件落着したのが満足そうで、その顔を見ると私は胸が高鳴って苦しく感じた。


一瞬の間、静かだった室内は直ぐに普段通りの賑やかさを取り戻した。

自分の席に向かいだす坂巻さんの回りに女子達が集まり、言葉をかけながら、彼がそれをスマートに受け流している。