腹黒上司が実は激甘だった件について。
前回の議事録作成を頑張ってしまったせいか、坪内さんは私をことごとく会議に付き合わせるようになった。議事録だけでなく、あれこれ手広く仕事を振ってくる。
もちろん、いきなり高度なことはできないので、できる範囲から一歩ずつだ。仕事を教えること、仕事を覚えることはとても時間がかかる。どうやら坪内さんは、本気で私を育てようとしているらしい。
それならそうでとことんやってやりますよ。だって私は一人で生きていくんだから。キャリアウーマンとか最高じゃないか。このご時世、社員でもクビになることがあるんだから。それにこんな勉強できる機会滅多にないし。
おかげで坪内さんとランチをする機会も増えた。毎回律儀に奢ってくれようとするけど、それはさすがに断っている。気持ちは嬉しいけれど借りを作りたくないし、そこまでされると餌付けされてるみたいだ。
新しいお店を坪内さんと開拓するのも楽しくなってきた。坪内さんはイケメン王子様だから、おしゃれなお店が合うよなぁなんて思ってたけど、今日はおしゃれとは無縁な感じの小さなラーメン屋さんでランチだ。
「何だよ?」
「坪内さん、ラーメンも似合うなあと思って」
「はあ?」
私の言葉に、訳がわからないといった顔をする。
「だって坪内さん、社内で王子様って言われてるんですよ。王子様とラーメンって結び付かないのに、似合うんだもん。反則ですよ」
「王子様ねぇ。何を思ってそんなこと言うんだか」
坪内さんは心底興味無さそうに、呆れた表情でラーメンを食べる。
「もしかして王子様の自覚無しですか?」
「秋山も俺を王子様だと思うの?」
「うーん、見た目は王子様みたいですけど、中身は違いますからねえ。腹黒王子ってとこですかね?」
「上司に向かってよくそんなこと言えたな」
思わず本音が出てしまって、しまったと口元を押さえたが、当の坪内さんはお腹を抱えて大笑いをしている。
「秋山のそういうとこ好きだな」
笑顔でさらりと言うので、一瞬聞き逃したかと思ったけど…。
好き?
何が?
そういうとこ?
どういうとこ?
私にはさっぱりわからなかったけど、その日坪内さんは何故か上機嫌だった。
もちろん、いきなり高度なことはできないので、できる範囲から一歩ずつだ。仕事を教えること、仕事を覚えることはとても時間がかかる。どうやら坪内さんは、本気で私を育てようとしているらしい。
それならそうでとことんやってやりますよ。だって私は一人で生きていくんだから。キャリアウーマンとか最高じゃないか。このご時世、社員でもクビになることがあるんだから。それにこんな勉強できる機会滅多にないし。
おかげで坪内さんとランチをする機会も増えた。毎回律儀に奢ってくれようとするけど、それはさすがに断っている。気持ちは嬉しいけれど借りを作りたくないし、そこまでされると餌付けされてるみたいだ。
新しいお店を坪内さんと開拓するのも楽しくなってきた。坪内さんはイケメン王子様だから、おしゃれなお店が合うよなぁなんて思ってたけど、今日はおしゃれとは無縁な感じの小さなラーメン屋さんでランチだ。
「何だよ?」
「坪内さん、ラーメンも似合うなあと思って」
「はあ?」
私の言葉に、訳がわからないといった顔をする。
「だって坪内さん、社内で王子様って言われてるんですよ。王子様とラーメンって結び付かないのに、似合うんだもん。反則ですよ」
「王子様ねぇ。何を思ってそんなこと言うんだか」
坪内さんは心底興味無さそうに、呆れた表情でラーメンを食べる。
「もしかして王子様の自覚無しですか?」
「秋山も俺を王子様だと思うの?」
「うーん、見た目は王子様みたいですけど、中身は違いますからねえ。腹黒王子ってとこですかね?」
「上司に向かってよくそんなこと言えたな」
思わず本音が出てしまって、しまったと口元を押さえたが、当の坪内さんはお腹を抱えて大笑いをしている。
「秋山のそういうとこ好きだな」
笑顔でさらりと言うので、一瞬聞き逃したかと思ったけど…。
好き?
何が?
そういうとこ?
どういうとこ?
私にはさっぱりわからなかったけど、その日坪内さんは何故か上機嫌だった。