腹黒上司が実は激甘だった件について。
とりあえず家財道具は無事だった。
数日分の着替えと貴重品を鞄に詰め込んで、家を出る。
とてもじゃないけど、あの臭いの中過ごすことは無理そうだ。

家を出たはいいが、行く当てはないのでとりあえず駅前の満喫へ行った。
今日はここで過ごそう。
だけど、明日からはどうしよう。

実家はそれほど遠くはないが、会社へ通うことを考えると無理がある。
親友の奈穂子は彼氏と同棲中だし。
泊めてくれるかもしれないけど、さすがに気が引ける。

となるとホテル生活かなぁ?
ていうか、引っ越ししなきゃダメなんだよね?
住めないもんね。
補償とかどうなるんだろう。
ああ、考えなきゃいけないことがいっぱいだ。

溜め息とともに頭に過ったのは、坪内さんだった。

直ぐさま頭をブンブンと振る。
いやいや、ありえないから。
なんでそこで坪内さんが出てくるの。

一緒に住もうとか、セクハラ発言をするからだよ。
本当にもう、腹黒王子め。
人の心を掻き乱すんじゃないわよ。

その日はとりあえず、漫喫で夜を明かした。
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