古都奈良の和カフェあじさい堂花暦
そんなことを話していると、ちりりんと入口のドアベルの音が鳴った。
「いらっしゃいませー」
笑顔でそちらを振り向くと、佐保ちゃんが入って来るところだった。いつも弾むような笑顔でやって来るのになんだか元気がない。
「なんだ、またおまえか」
奏輔の憎まれ口にも返事を返さず、黙って壁際の二人掛けの席に座る。
私と奏輔さんは顔を見合わせた。
何か言おうとする奏輔さんを制して、私は水のグラスをのせたトレーを持って佐保ちゃんのテーブルに近づいて行った。
「いらっしゃいませ。今、塾の帰り?」
声をかけると、佐保ちゃんがこちらを見あげた。その目には涙がいっぱいたまっていた。
「さ、佐保ちゃん?」
どうしたの? と訊ねるより早く佐保ちゃんが私に抱きついてきた。
「悠花さん~」
「ど、どうしたの。佐保ちゃん」
おろおろしていると、それを見た奏輔さんがカウンターの中からのんびりとした声をかけてきた。
「どうした。鹿にでもかじられたんか」
「ちがうわっ」
佐保ちゃんが涙に濡れた顔をあげる。
「悠花さん、うちどうしよう。どうしたらええの?」
「な、何が?」
「店先でべそべそせんと順を追って話せ」
営業中に何考えとるんや……と文句を言いながらも奏輔さんが淹れてくれた抹茶ラテを飲みながら佐保ちゃんが話してくれたのは次のような話だった。
「いらっしゃいませー」
笑顔でそちらを振り向くと、佐保ちゃんが入って来るところだった。いつも弾むような笑顔でやって来るのになんだか元気がない。
「なんだ、またおまえか」
奏輔の憎まれ口にも返事を返さず、黙って壁際の二人掛けの席に座る。
私と奏輔さんは顔を見合わせた。
何か言おうとする奏輔さんを制して、私は水のグラスをのせたトレーを持って佐保ちゃんのテーブルに近づいて行った。
「いらっしゃいませ。今、塾の帰り?」
声をかけると、佐保ちゃんがこちらを見あげた。その目には涙がいっぱいたまっていた。
「さ、佐保ちゃん?」
どうしたの? と訊ねるより早く佐保ちゃんが私に抱きついてきた。
「悠花さん~」
「ど、どうしたの。佐保ちゃん」
おろおろしていると、それを見た奏輔さんがカウンターの中からのんびりとした声をかけてきた。
「どうした。鹿にでもかじられたんか」
「ちがうわっ」
佐保ちゃんが涙に濡れた顔をあげる。
「悠花さん、うちどうしよう。どうしたらええの?」
「な、何が?」
「店先でべそべそせんと順を追って話せ」
営業中に何考えとるんや……と文句を言いながらも奏輔さんが淹れてくれた抹茶ラテを飲みながら佐保ちゃんが話してくれたのは次のような話だった。