硝子の花片
山南さんはふわっと微笑み私の頭を撫でる。
その仕草がまるで父親みたいで、子供じゃない!と怒るにも怒れなかった。優しくて安心するあたたかい手。

この手が、新撰組を守っている。そう感じた。

「君も私達の可愛い妹のようなものだよ。」

私は山南さんの後ろに後光が差しているのかと錯覚するくらい、嬉しかった。
ただの居候じゃなくて。仲間じゃなくて。妹と思ってくれている。

私が遠慮していただけなのかもしれない。
新撰組の、家族のような輪に入ることに。

「…ありがとうございます。」




その後、散々な目にあい帰ってきた新撰組の皆さんを宥めたのは山南さんだった。

山南さんは新撰組の要なんだ、と改めてわかった。のだが。


この後だ。事件が起こるのは。






「私、伊東甲子太郎と申します。よろしく。」

伊東甲子太郎、頭も良く北辰一刀流の遣い手で弟子を取るくらいの腕利きだと言う。山南さんとは同門だ。

彼はその能力を買われ、参謀に就任した。


「…なんか、あの人ちょっと苦手だなあ。」

「え?どうしてですか?」

沖田さんが苦笑いをする。

「だって、目的の為なら手段を選ばなさそうな所とか、衆道疑惑がある所とか…」

「あ…確かに…」

ちなみに衆道とは、まあ、男なのに男が好きだと言う、昔の武士の中で流行(?)していたものだ。(久しぶりの瑞奈情報である)

新撰組は男子の集まりだ。そういうのが入ってきたら色々困るんだろう。と察した。

「桜夜さんも男装しているんですから、気をつけてくださいね?それに…」

沖田さんはふと顔を背けた。
言葉を詰まらせる。

「…桜夜さん、綺麗ですから…その…目をつけられやすいかなって…」

沖田さんの耳が赤くなっている。

私の体温も上昇していくのがわかる。

「えっと…はい。気をつけます…っ。」





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