硝子の花片
「…なんで連れて帰ったんだよ」

「…」

平助くんの怒りのような掠れた呟きに沖田さんがピタリと足を止めた。

「…帰ってきたら死ななきゃいけないって、分かってたんだろ!?」

平助くんが涙に濡れた顔を上げて叫んだ。沖田さんの胸ぐらを掴む。

「平助くん…っ!」

「総司は山南さんが切腹して嬉しいの?ねえっ…!
なんで…?なんでだよっ!!」

悲鳴にも似た平助くんの叫びと共に沖田さんが膝から崩れ落ちた。

そのまま廊下に座り込む。

そのぐったりとした姿からは全く生気を感じられない。
床を見つめる瞳は虚ろで、何を考えているのか全く分からない。

「沖田さん…!?」

私は沖田さんの傍に駆け寄った。

呼吸が荒い。肩で呼吸している。

沖田さんも悲しかったのだ。どんなに表に出さなくたって、兄同然の人を死なせるのは悲しかったのだ。

沖田さんも、人間なのだから。


「…ごめん。言い過ぎた。…部屋まで運ぶよ」

そう言って平助くんはぐったりとしている沖田さんを背負って部屋へ運んだ。



私は思う。

みんなが背負っている悲しみは、きっと無くならない。

乗り越えなきゃ行けないものなのだ。




世界は残酷なんだな、こんなに若い人にも酷な運命を与えるなんて。


私は支えなきゃ行けない。
ここに居る限り、この大きな悲しみを背負っている人達を。
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