硝子の花片

別れと運命

12月。


今で言う1月は雪が降っていて羽織を着ても肌寒い。


動かなければぶるっと震えが止まらなくなる。



でも、そんなことはどうでもいい。


私は庭に降り積もる雪をぼんやり眺めていた。


「…綺麗…」

1面真っ白で穢れのない銀世界。

キラキラ輝いて見えるそれは綺麗、としか言い表せない。

「…桜夜さん、寒くないんですか?」

いつの間にか総司が隣に立って私と同じく雪を見ていた。その横顔は、さらに少し細くなった感じがする。雪に紛れてしまいそうだった。

「私は大丈夫ですよ。総司こそ布団に入ってなくて大丈夫なんですか?無理したら私も土方さんも怒りますよ」

「布団にずっと入ってたら気持ち悪いんですよー?それに…この雪が、恋しくなってしまって。」

そう言って笑う総司は、来年の雪は見られない、と思っているかのように悲しげで儚かった。

思わず胸がチクリと痛む。

(そんなことない。絶対来年も再来年も総司と一緒に雪を見る。絶対…出来る…)


いつもなら来年も再来年も雪を見るだなんて、当たり前すぎてアホらしいとも思うが、今は違った。

当たり前は、当たり前じゃない。


どこかで理解していて、どこかで理解出来ていない。


総司と離れるなんてこと、無い。と都合の良い方に考えて、目を逸らしているだけだ。

そうしていないと「いつも通り」で居られない自分が嫌で仕方なかった。


私は思わず溜息をついた。

息が真っ白に染って、雪の中に消える。



(私も、真っ白になれたらいいのに)


「…真っ白って綺麗ですね」

「だが、味気なくもある」

「っ!?」

総司の弱々しい呟きに答えるようにして、聞き覚えのある、何だか懐かしい声が聞こえた。

「斎藤さん!?」

斎藤さんこと斎藤一は新撰組三番組組長であったが、伊東甲子太郎と共に新撰組を去ったはずだ。

なんでここに…?

「あ、斎藤さん。お帰りなさい。」

総司は何ともなかったかのように微笑む。

「ああ。」

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