硝子の花片
「えっ、斎藤さん、伊東さんと一緒に去ったんじゃ…?」

「ああ、俺はついて行って向こうの情報を探っていただけだ。」

「つまり、間者としてこちらから送り込んでいただけなんです。…けほっ」


斎藤さんは新撰組から送り出したスパイ…じゃあ、平助くんは…?という私の疑問に気付いたのか斎藤さんがこちらに顔を向ける。

少し苦しそうに顔を歪ませ答える。


「…平助は違う。平助は自分で選んだ。」



平助くんが、新撰組から離れる事を望んだ…?

あれだけ皆の事想ってたのに…?



「…では俺は局長に報告してくる。」

そう言って斎藤さんは背中を向けたが、すぐ立ち止まり、振り返る。

「…総司、いつまで撃剣師範の職を永倉に任せているつもりだ?お前の抜けた穴は大き過ぎる。…少し痩せたな。ちゃんと治すのに専念してくれ。では。」

淡々としているがその言葉の影には優しさがいっぱい詰め込まれている。


「斎藤、さん…」

総司は斎藤さんがいなくなった後も無言で、けれどどこか笑っているような表情で雪を見つめていた。

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