硝子の花片
「総司、粥持ってきましたよ」

「……今お腹すいてない」


総司の食欲がいつも以上に無くなっている。
食で気力をつけなきゃいけないというのに、だんだん食が細くなっていく。

体も、声も、細くか弱くなっている気がする。

「…少しは手をつけてください…心配です…」

手に取れば溶けてなくなるあの雪みたいに、すぐ消えてしまいそうで。

「…」

総司は何も言わず、私に背を向け体を丸めた。



その背中は何も言わない。

けれど、その肩幅の大きくないすらっとした背中に、時勢や不治の病という大きな魔物が取り憑こうとしているのはわかる。


大切な人達の死も乗り越えてきた彼。

しかし彼も1人の人間なのだ。

耐えきれないときだってある。




そんなの知っている。
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