君が眠る時には

「俺が、もし冗談だって言ったらどうする?」


「何もしないよ」


「本気だったら?」


「……いいよ」


悲しそうに微笑んだ葵は、私に向かって近づいてきた。


そして、そっと……唇が重なった。


葵の唇は冷たくて、震えていた。


唇は重なったまま。


そっと目を開けると、葵の目からは涙が流れていた。


泣いてるの?


なんで?


あなたは何を抱えているの?


葵の涙の意味も、キスの意味も、なにも分からない。


でも、知るのも怖くて。


全てをしってしまったら、私たちは壊れてしまう気がした。
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