はちみつドロップス

こうしてプラス朗楽で幕を開けた初デート。



「うわぁっ! 魚一杯居るよ! 行こう朗楽くんっ」

「あぁ! 天待ってぇ」



休日で水族館には家族連れがそこかしこに溢れかえっていた。


にも関わらず、館内に広がる巨大水槽にテンションを上げた天は大はしゃぎで朗楽の手を引いて走り出す。



四歳児よりはしゃぐ十八歳の背中に呆れたような眼差しを向ける皇楽。



「はぁ……。はしゃぎ過ぎ」



朝から張り切って作ったお弁当の入った紙袋を提げ、溜め息混じりに二人の背中を仕方なく追いかける。



「あの魚オレンジ色してるね」


「天! 向こうにピンクも居たぞっ!」


「ホントッ!?」



熱帯魚の入った水槽がいくつも並ぶコーナーに横歩きでわめきっぱなしの四歳児と十八歳の女児。



「おまえら……迷子になるから勝手に行くなって」



人の波をかき分けてようやく二人に追いついた保護者は、デートにも関わらずいつもの如く眉間にシワを寄せ始めていた。




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