はちみつドロップス

五人が傍観している二人の痴話喧嘩とも親子喧嘩とも取れない言い争いに、


「修護のバカっ! 大嫌いっ!」


椎菜の大粒の涙とこの一言で終止符が打たれた。



「あっ、椎菜っ」



泣きながら走り去ろうと踏み出した椎菜に、藍楽が駆け寄れば、



「高原先輩追いかけてくださいっ」



ちゃっかりと言い残してから走り去る椎菜に、思わず脱力。



「皇兄ご指名だけど……」


「行くワケないだろっ。さっさと追え」



仕方無く追いかけてやる藍楽の背中に、皇楽は思わず盛大な溜め息を漏らした。



そして視線を向けるのは、目の前で立ち尽くす無表情男だ。



「城戸くん?」



完全に固まっている修護に絵那が恐る恐ると呼び掛ける。


それに振り返り、尚も表情が変わらないのに、



「生まれて初めて椎菜に大嫌いって言われました」



弱々しい口調でポツリと呟いた修護の一言には、絶大なショックが込められていた。



難しい顔をしたまま内心では狼狽えているらしい。

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