暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】
フィグリネ様は本当に賢く、そしてズルいお方だ……。
私はフィグリネ様の後ろ姿を見つめながら拳をぎゅっと握りしめた。
*
ピンク色の蕾を眺めながら私は庭園である事をずっと考えていた。
それはいつスフィア様に『あの事』を話すかだ。
そもそもフィグリネ様に会ったことも、ここへ来られた事も言っていない。
「どうしよう……」
答えはすでに決まっている。
けれどスフィア様の元から離れたくないと思う私がいる。
しかし私が断ってしまえば……。
恐らくフィグリネ様に邪魔をするのだろう。
帰ってきた後も楽しそうにお茶会であった事を私へ話していたスフィア様の気持ちも、嫌がらせを止める唯一の手段もこの先の事も……私が断ればそれらを壊してしまう事になる。
しかし断らなくとも私はスフィア様を裏切る事になるのでどちらにせよ最悪な選択な事に変わりはない。
なんでこんな事になってしまったのか。
私は憂鬱な気持ちを感じながら今日もお茶会へ行っているスフィア様のお戻りを一人で待っていた。
「テリジェフとはお前の事か?」
すると廊下の方から女の人の声が聞こえ、そちらの方へ体を向けるとそこには侍女の服装だが、他の者よりかは上質な生地を身に付けた女の人が廊下からこちらを見ていた。
「はい。私でございますが……貴女様は……?」
「私はフィグリネ様の使いで参った侍女のレイジュと言います」
フィグリネ様の使いの侍女………と言うことはつまり。