暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】



サニーはそう言って疑問そうに、私へ大きなアンティーク調の卓上ミラーを持って見せてきた。


鏡の中にはサニーにより緩く巻かれた、肩下までしかない金髪のウィッグを被った私が映っており、


ふと使用人をしていた時のことを思い出させる。


「サニーありがとう。黒髪である事は一応隠しておいた方が良いと思ったから……」


宮殿で働く者はもちろんの事、他国やこの国の民でさえもアンディード帝国の妃は黒髪だと知れている。(中には知らない者もいるが……)


しかもこの国で黒髪なのは私ぐらいしかいない為、町で黒髪の人が歩いていたとなればまず妃だと疑われるだろう。


例え護衛が付いていようとも最小限に危険を避けるために…………………念の為変装をね。











______コンコンコンッ。


商人の娘風に着替え終えたその時、ドアをノックする音が部屋に響き渡った。


「今回お妃様に同行させて頂きます第二騎士団団長クレハ・アリス・エラストマーと申します。お迎えに参りました」

どうやら今回護衛にと陛下が命じた者らしく、わざわざ部屋まで呼びに来てくれたようだ。


____ガチャ。


ドアを開けるとそこにはアシメ前髪をしたアッシュグレーの男が立っており、私を見ると軽くお辞儀をした。


「ありがとう。今回は私の私用にて付添いをさせてしまい大変申し訳なく思うわ。クレハにとっては少々詰まらない場所かもしれないけれど、どうか宜しく頼みます」


護衛を付けるとは陛下から聞いていたがまさか団長クラスの人を付けるなんて思っていなかった私は内面驚きつつも、平然を装ってクレハに微笑んでみせた。



本当は新人でも誰でも良かったんだけど陛下はそれではいけなかったみたい……。



私は呼びに来たクレハと支度を手伝ってくれた使用人達と共に、馬車の止めている門の前まで移動をした。






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