たとえ、この恋が罪だとしても。
「白石、助手席な」
そう言うと、山崎先生は運転席に乗った。
その後を追うように、助手席のドアを開け乗り込んだ。
「シートベルトな」
「はい」
山崎先生に言われシートベルトを締めると、車が発進した。
車内はラジオが流れ、少しタバコの匂いがする。
「…」
親以外の人の車に乗るのは初めてで、相手は山崎先生のはずなのに少し緊張する。
「…心配なら、すぐに来ればいいのにな」
「え?」
バックミラーを見ながら言った、山崎先生の一言。
心配なら?
すぐ来ればいいのに?
何のことを言っているかわからず、首を傾げ運転している山崎先生を見つめた。
「こっちの話。それより、顔酷いことになってるから拭けば?」
「顔が酷い!?」
先生なのに、生徒に何ていうことを…と思いながら、サイドミラーで自分の顔を見た。
「!!?」
ミラー越しに見た、自分の顔に驚いた。
こ…こんな顔で山崎先生と話してたの?
目は真っ赤、まぶたは腫れて、頬には涙の跡が残っている。
…これは、酷い顔だ…
両手で頬を抑え、落ち込む。
「うちに着いたら、目は冷やせばいい。顔は洗った方がいいな」
「…はい」
この顔が恥ずかしくて、窓の外を見たまま返事をした。
「!」
すると、ぽんっと運転席から頭を撫でられた。
「いつもとそんなに変わらないから、気にすんな」
「!?」
なっ…
山崎先生の発言に聞き捨てならないと、横目で睨みつける。
一瞬だけ目が合ったが、山崎先生はすぐに視線を前に向けた。
「ははは。怖いな」
怖いなと言いながらも、楽しそうに笑っている。
「もう!!!」
からかわれた!!!
シートベルトを強く握り締め、もう一度山崎先生を睨みつける。
山崎先生はいつもいつも、私をバカにして…
…まぁ、今日は助かったけどー…
山崎先生とのやりとりで、少し心がほっとしたように感じた。