黒豹プリンスと傷だらけのプリンセス
もう間もなく、病院の閉館……

最高に幸せな面会の時間も、残りは翌日に持ち越されることになった。



「じゃあね、健。明日も来るから……。それから、レ……いや、先生も。明日もよろしくお願いします」


この世界のレオパード……いや、雹には未だに慣れず、私の顔は火照ってしまう。

雹はそんな私に白い歯を見せて微笑みかけてくれた。


「ええ、勿論。明日も……健くんが退院するまでずっと、お待ちしていますし、お世話になります」


そして……彼は頬を染めながら頭をポリポリ掻き、しどろもどろに口を開いた。


「ただ……お姉さん。健くんが退院されても……お会いして良いですか?」

「えっ?」

「いえ、その……プライベートで」


そう言って口ごもる。

そんな純粋な彼を見ていると、やっぱりあの世界……

愛しい私のレオパードにしか見えなくて。

クールでカッコいい彼が頬を染めているのが、何とも言えず可愛くて……

私は思わず、吹き出してしまった。


「え、お姉さん?」

「いえ。私の方こそ……プライベートでもあなたにお会いしたいわ」

「本当ですか!?」


雹の顔が途端に歓喜で満ちた。


「あ、ちょっと、先生。僕のお姉ちゃんだよ」


健は幼いながらも嫉妬心が芽生えたのか、頬を膨らませて雹を睨んだ。


「はは、ごめん、ごめん。健くん、まずは君の許可を取らないといけなかったね。どう? 私はこれから、お姉さんと会ってもいいかい?」

「うーん……」


健は腕を組みながら雹の顔を見て考えて……すぐに無邪気な笑顔を浮かべた。


「うん、いいよ。先生なら……」


そんな健の答えに、私も雹も笑って。

こんなに元気な健……そして、レオパードの生まれ変わりとしか思えない雹。


そんな二人と過ごす時間はこの上なく幸せで。

私はこの現世に戻ってきて、こんな幸せが訪れるとは思っていなくて、夢ではないかと疑ってしまうほどで。

私の目に映る二人の顔は、瞳に込み上げる熱い涙で滲んで揺れた。
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