黒豹プリンスと傷だらけのプリンセス




ここはヴォルブ、リオン城。


「ナミプリンス様、私めをお呼びでしょうか?」


呼び出した兵士を見て、奈美はにやりと笑った。


「えぇ。お舐め」

「はっ……」

「だから! 足を舐めろって言ってんのよ!」

「ははぁっ!」


その男は筋肉も隆々で、ヴォルブの中でも最強の兵士と聞いている。

それなのに、今は間抜け面して足の裏を舐めるウルフの四天王の一人……ナエイハを見て、奈美は冷ややかに笑った。

彼女にとってそれは、気分の良いことこの上なかった。

何しろ、奈美がヴォルブに来てから、幾人ものウルフの男達が彼女に跪いて……彼女は彼らを奴隷として扱っていたのだ。



それはそう……麗の友人だった奈美。

彼女こそが、ヴォルブのプリンセス……その生まれ変わりだったから。



奈美は麗と時期を同じくして、ウルフの使者によってヴォルブに連れて来られた。

麗と違ったのは、彼女の本性によってさらけ出されたその態度。

彼女は大国のプリンセスであるのを良いことに、ウルフの男達を隷属させて、好きなように扱っていたのだ。




「ねぇ、そこのあなた」


彼女はナエイハに足を舐めさせながら、隣のウルフに艶やかな目を向けた。


「宝玉。赤いのと青いの……いつになったら手に入るの?」

「はっ。それは今、作戦を練っている所でして……」


すると奈美は豹変して……刺すように激しく、鋭い目を彼に向けた。
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